聴性脳幹インプラントについて

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聴神経の障害による難聴については、人工内耳も効果がなく、これまで治療は不可能でした。しかし海外では聴神経よりもさらに中枢にある脳幹を直接に電気刺激し聴覚を取り戻す、という画期的な人工臓器あるようです。それが聴性脳幹インプラント(Auditory Brainstem Implant:ABI)です。

ABIの仕組み

abi1

体の外に設置するスピーチプロセッサと、体に埋め込む電極から構成されます。

マイクロフォンで捉えられた音声をスピーチプロセッサで電気信号に変換します。変換した電気信号は、電磁誘導(いわば無線)で頭皮下に埋め込まれたreceiver-stimulatorに伝えられます。ここでさらに電流パルスに変換され、蝸牛神経核上に置かれた電極を通じ、神経細胞を電気刺激して、「聞こえ」に変えていく仕組みです。

おおまかなシステムは人工内耳と同様ですが、人工内耳が蝸牛に電極を埋め込むのに対し、ABIはさらに中枢にある脳幹の表面に電極を置きます。脳幹の深いところに聴神経の神経細胞の集合である蝸牛神経核がありますが、通常、聴神経が障害されていても神経核は機能しているようです。

ABIの手術適応基準

  1. 神経線維腫症第2型(両側聴神経腫瘍)あるいは両側の内耳の骨化、無形成あるいは外傷 等による両側聴神経の切断があり、人工内耳の手術ができない場合
  2. インプラントは左右いずれかの腫瘍切除時に実施する
  3. 他に重篤な合併症がなく心理学的にも適合していること
  4. 原則として、ガンマ・ナイフ治療(放射線治療)を受けていないこと

特に4の項目は、これによって脳が癒着するためにABIの手術が難しくなる、脳幹の蝸牛神経核の細胞数も減りABIの成績が低下する可能性があるため、と言われています。しかし、全例で適応されないわけではないようです。

神経線維腫症第2型とは
通常、聴神経の腫瘍は片側にしかできないが、まれに両側の聴神経に腫瘍(神経鞘腫)ができる場合があります。これは神経線維腫症第2型(Neurofibromatosis type2:NF2)と呼ばれます。NF2は常染色体優性遺伝の形式をとり、頻度は4万人に1人の割合で発生します。染色体22番の遺伝子異常に基づくもので、男女差はなく、若年(10代後半から20代)に発症します。両側聴神経ばかりではなく、脳や脊髄にも腫瘍(多くは良性)が多発することが多く、両側の難聴の他、多彩な症状を生じます。放置すれば腫瘍が増大し、いずれは顔面神経や脳を圧迫します。

術後成績

手術が成功すると、「ABIによる聞こえ+読話」を併用して日常会話が可能となります。
術後成績を決定するには、以下の要因が大きく関わります。また、完全に成績を予測することはできません。

  • 失聴期間が短い
  • 脳の聴神経細胞が多く残っている
  • 言葉に対する勘の良さ

注意してほしい点は、ABIを使用しても失聴前の聴力に戻るわけではない、ということです。ABIによる聞こえは人工的な音で自然な音として聞こえるわけではありません。また、術後はリハビリが必要となり、ABIだけの聞こえだけでは会話が難しい場合は読話の訓練も必要となります。

治療にかかる費用

聴性脳幹インプラント装置は主治医が個人輸入申請書を厚生省に提出し、許可された場合にのみ個人輸入されます。聴性脳幹インプラント装置は一式270万円の金額がかかりますが、これは自己負担となります。その他に、入院、手術料も個人負担となります。

参考

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