オーダー「マクラの難しさ」

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ウィムッシュ!

落語を聞く上で、マクラは欠かすことのできないもの。

自己紹介や噺の説明など、マクラの役割は多い。

しかし、その分、マクラの失敗は噺にも直結するため力量が試される。

 

ある落語会でのこと。

いつも通り落語教室の主催さん経由で依頼をいただき、集合時間等の確認をしているときに、ふと疑問が浮かんだ。

 

「いつも当たり前に高座は準備されているが、誰がつくってくれているのだろう」

 

主催さんにその疑問を投げ掛けると、案の上、主催さんが早めに向かって会場準備をしているとのこと。

 

何故いままで気づかなかったんだ!

誰かが会場準備をしているなんて当たり前だろう!

大変失礼なことをしてしまっていた!

 

謝罪とともに今回以降は準備から手伝う旨を返信し、当日は早めに会場入りすることに。

 

落語会当日。待ち合わせの午前9時に会場入りし、主催さんとともに舞台準備に取りかかる。

午前10時。高座、音響ともにセッティング完了。

「みやのひろさんお手伝いありがとう。開演は午後2時だから稽古するなり弁当食べるなりして待ってて」

準備早く終わりすぎだろwww

空き時間が4時間もあるじゃねぇかwww

稽古するにしても時間をもて余すわwww

 

とりあえず通しで2度ほど稽古をするが、30分で終了。

主催さんは残りの演者さんを迎えにいってしまい、だだっ広い会場でひとりぼっち。

あまりにもやることが無さすぎてコンビニと会場を往復していると、見かねた会場職員さんからお声がかかる。

 

「本でも読んで過ごされたらどうでしょう?」

 

確かにこのままコンビニとの往復で時間を潰すのは辛い。

お言葉に甘えて読書をすることに。

さっそく書庫のラインナップを眺めるが、小説は読み終わらなそうだし、雑誌は興味が引かれるものがない。

悩みに悩んだ末、唯一の漫画である三国志を読むことに。

そこで、ふと閃く。

 

「このエピソードをマクラでやってみよう」

 

三国志を読む傍らでマクラを練り、だいぶ読み進んだところで他の演者さんが到着し、開演を迎える。

 

今日の出番は中入明け。

休憩で弛緩した空気を引き戻す大事な順番だ。

開口一番から順調に進み、中入り、そして自分の出番がくる。

 

ドドン。

 

出囃子の音が鳴るとお客さんが高座に集中する。

 

よし。いくぞ。

 

高座にあがりお辞儀をする。

「皆さんこんなに落語を見て疲れたでしょう。待ちに待った帰宅時間までもう少しの辛抱ですから我慢してください。」

 

クスクスw

まずは挨拶代わりのいじりから入る。

ウケは上々。次いでさきほど練ったマクラを披露する。

 

「まぁ、皆さんが疲れてるのはわかりますが、私だって疲れてます。何たって、9時に会場準備を始めたんですが1時間で終わってしまって・・・皆さんが来るのを4時間も待ったんですから」

 

うわぁ・・・

客席から同情の声があがる。

 

・・・あれ?

ここは自虐ネタで一笑い誘いおこるはずなんだけど。。。

完全なる計算ミスに若干戸惑うが、まだまだ自虐ネタの序盤。

間を置かずに次に移る。

 

「まぁ、待ってる間暇なんで職員さんの好意で三国志を読んでたんですよ。それにしても三国志って名前がややこしいですね?劉備玄徳とか諸葛亮孔明とか。」

 

うんうん。

同意のうなずきをする客席。

ここで渾身の自虐ネタを畳み込む。

 

「でも、読み進むとさらにややこしくなるんですよ!曹操とか曹純とか曹仁とか!必死に覚えようと頑張ってたら今日のネタが若干吹っ飛んじゃいましたよw」

 

・・・

客席から向けられる同情の眼差し。

 

ちょwww

まさかの反応なんですけどwww

しっかりと練りに練ったマクラが失敗したんですけどwww

 

さすがにこの流れはまずいと思い、無理矢理話題を変えて演目に入る。

しかし、お客さんの反応は冷えきったまま。

ようやく笑いが起き始めたのがサゲの一歩手前。

微妙な拍手のなか、苦々しい気持ちで高座を降りる。

 

失敗した。

今回は誰の目にもわかるほど失敗した。

せっかく中入明けの出番をもらったのに、それを活かすことができなかった。

その後、ベテランの先輩が場を吹き返してくださり、無事に落語会が幕を閉じた。

閉幕後は出口でお客さんをお見送り。

 

「すっごく楽しかったよ!」

「本当に上手でした!」

「プロ顔負けですね!」

 

と、先輩に称賛の言葉を贈るお客さんたち。

そして私の前に来ると

 

「もっと頑張ってね!」

「先輩にたくさん稽古つけてもらいな!」

「若いんだから延び白があるよ!」

 

同情はもううんざりだー!!!

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