オーダー「クリスマス会deボランティア落語」

落語

ウィムッシュ!

 

地域の中学校のクリスマス会からボランティア落語の依頼が入った。

中学生相手に落語をやるのは初めての経験。

どのネタで勝負すべきか、事前に師匠にお伺いを立てたところ、子供相手には動物ネタが良いだろうとのこと。

しかし、相手は思春期まっさかり。

果たして動物ネタが通用するかどうか。

同じくボランティアで来た兄さん姉さんたちと控え室で準備を整え、いざ会場入りする。

すると、まさかまさかの中学生、保護者、スタッフの総勢50名は越える視線に出迎えられる。

 

ちょwww

こんなに観客がいるとは聞いてないwww

あ・・・そもそも人数聞いてなかったか。ってこれは予想できないだろw

 

いままでの最大観客人数は30人。それを軽く上回る人数に圧倒される。

しかし、こちらの動揺は余所にクリスマス会は幕を開け、主催者が挨拶を始める。

 

「皆さん!今日は落語家さんをお呼びしました!落語を生で見たことある人はいますかー?」

 

主催者の声に客席からパラパラと手があがる。

大方の予想通りほとんど保護者席からの挙手。

この反応を見て、主催者は少々思案したあと

 

「面白かったら大きな声で笑ってね!手を叩いても良いですよ!ね、手を叩いても良いですからね!」

 

と、まさかの笑い強要。

 

ちょwww

何この前振りwww

やりづれぇぇぇぇぇ!!!

こんな空気で笑えるわけねぇだろぉぉぉぉぉぉ!

 

しかし時間は待ってくれず、会場内にお囃子が響き渡る。

腹を括り、ゆっくりと高座に上がる。

そして、とりあえず様子見の第一声を出す。

 

「みなさん、こんにちは!」

「「「こんにちは!!!」」」

 

感触は上々。

これを無視されたらもう逃げようかとも考えていた。

今回は時間を決められているので、軽めのマクラからさっそくネタへ。

序盤からトップギアで観客を笑いへ誘う!

 

が、クスリとも笑わない学生たち。

そして、その様子を微笑ましく見ている保護者の方々。

 

マジか!?

序盤から外したか!?

 

だが、一度の笑い所で失敗したくらいでへこたれてはいられない。

勢いをつけるようにまくし立ててから、中盤の笑いどころ!

 

先程のデジャブかと思うような無表情の学生たち。

 

マジなんだこの空気感はーーーー!

誰一人笑いもしねぇ!

ツラい。。。こんなにツラい経験は生まれてこの方初めてだ。。。

 

焦りからか自然と早口になり、早口が客を置いてけぼりにし、さらに焦り早口になる。

わかってはいるが自分では止めることのできない。

まさに負のスパイラルに陥る。

 

然して暑くもないのに汗は滝のように流れ出て、たまらず袖口で拭う。

 

そんなとき

 

ふと、スタッフ席の最後列に笑い顔を見つけた。

これはまさかと思い、スタッフ席側を向くときに注視してみると、確かに自分の口調に合わせて小さく笑っている!

 

おお神よ!

あなたは我を見捨てなかった!

こんなところで天使に出会わせてくれるとは!!!

 

そのあとは無言の視線も何のその。

天使の笑顔を頼りに一生懸命ネタをやりきることができた。

 

しかし、いくら天使が笑ってくれたとは言え、学生たちに笑ってもらえなかったショックは想像以上に大きい。

満身創痍で高座を降り、会場の外で一人失意に暮れていると

 

「あの!」

 

と急に声をかけられる。

振り返ると、スタッフの天使さんが立っていた。

もしや俺に声を掛けたのか?と恐る恐る返答してみる。

 

「・・・何か用ですか?」

「あの・・・言語聴覚士のみやのひろさんですよね!?ブログ見てます!」

 

マジかwww

こりゃもしかして、ファンというやつかwww

ついに俺にもファンができたのかwww

 

声を掛けられるのなんて初めてだ!とドキドキしていると

 

「あの・・・私、言語聴覚士目指してます!よかったら言語聴覚士のこと教えていただけれませんか!?」

そこはお世辞でも落語の感想を言ってくれーーーーー!!!

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