オーダー「第4回落語教室2日目~新人教育~」

落語

ウィムッシュ!

ネタ下ろし後の初稽古となる2日目。

練習期間は2週間あったが、何せ頂いた演目が長く、台本は3分の1もできていない上、稽古もろくにできていない。

しかし、新人の前でカッコ悪い姿を見せるわけにもいかないため、教室へ向かう道中に前半だけでも頭に叩き込む。

教室へ着くとすぐに他の生徒も集まり、さっそく稽古が開始される。

 

「では、みやのひろさんからお願いします」

「よろしくお願いします!」

 

師匠から指名され高座に上がる。

 

「では、よろしくお願いします。『えー、世の中には小言っぽいなんて癖をお持ちのかたがいらっしゃいまして』」

 

お辞儀をしてさっそくネタに入る。

自分が初めて教室にきたときもそうだったが、稽古の仕方などの説明はない。

先輩方がやってるのを見て、稽古の流れを覚えていくことになる。

 

「『お前さんそうやって朝から井戸端を占領するんじゃないよ!全くしょうがないんだから。えー全くしょうがないんだから・・・全くしょうがないんだから・・・』」

 

・・・あれ?

・・・この先なんだっけ?

 

序盤も序盤で、台詞が止まったことに教室内に緊張が走る。

落ち着け。思い出せるはずだ。頭の隅から隅までひねり出せ。

 

「ちょっと待ってください。この後もう一人に小言言うのはわかってるんです。『えー全くしょうがない・・・』」

 

言い訳をして少しでも時間を稼ごうとするが、出てこないものは出てこない。

こうなったら仕方がない。

 

「『全くしょうがないんだから。。。』『あのー、家主はこちらですか?』」

 

思い出せない部分はカットして次の展開に進む。

姉さんの苦笑いが見えるが思い出せないのだから仕方がない。

チラッと師匠の表情も伺うと、険しい顔付き。

もちろん、稽古で小手先のズルを許すはずもなく

 

「そこまでで結構です。」

 

あっけなく高座から降ろされる。

 

「まず、台詞を頭に入れてきてください。」

 

至極当たり前のご指導をいただき稽古終了。

次に高座に上がった姉さん。

さすがと言うか、しっかり暗記しており師匠から丁寧に稽古をつけてもらい高座を降りる。

そしていよいよ新人の番。

先輩方同様、高座に上がりお辞儀をして稽古に入る。

と、思いきや、ここで新人が予想外の言葉を口にする。

 

「・・・ノート見ながらやって良いでしょうか?」

 

えっ!?

まさか!?

暗記してないのー!?

 

一瞬、戦慄する教室内。

自分がいままで参加したなかでこんなことを口にした人は初めてだった。

たっぷり10秒の静寂の後、師匠が口を開く。

 

「なるべく見ないように頑張りましょう」

 

何故か今日に限って甘い対応の師匠。

この一言から新人のなかでの稽古の仕方が変わってしまった。

次の新人も高座に上がると当たり前のようにノートを広げる。

台詞が全然頭に入ってなかったことを棚にあげて怒り心頭していると、最後にGeorgeが高座に上がる。

 

「よろしくお願いします!」

 

挨拶をすると、前の新人同様やはり当たり前のようにタブレットを正面に置き、稽古に入る。

 

タブレット・・・?

 

ちょwww

ノートはまだしもタブレットってwww

さすがの師匠も凝視しちゃってるよwww

 

まさかのIT文化に教室中唖然となる。

タブレットを使いこなせても昔の江戸言葉は理解できないのか、台本を読みながらでもつっかえつっかえで早々に稽古終了となる。

 

「本日はお疲れさまでした。皆さん、次回はしっかり台本を覚えてきてください。」

 

最後に師匠から釘を刺され、稽古が終わる。

明らかな練習不足で貴重な稽古を台無しにしてしまったことに凹んでいると、Georgeがタブレットを持って話しかけてくる。

 

「見てください!落語を効率良く学習できるアプリを開発しました!このアプリの作成に時間を取られて落語の練習がほとんどできませんでしたよ!」

「効率」という言葉をもう一辺辞書で調べてこーーーい!

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