ウィムッシュ!
開演5分前に師匠から言い渡された出演順の変更。
初の大トリが、人数調整という理由であっけなく霧散していく。
あまりの事態に数秒間頭が真っ白になってしまったが、しかし、師匠の取り決めは絶対。
とりあえず、兄さん姉さんたちに事の次第を伝えて段取りを調整していく。
そうこうしているうちに5分はあっという間に過ぎ、トップバッターの演者が高座にあがる。
今回はトリだからと、演目の最終チェックもマクラのネタもそこに照準を合わせてきた。
それをこんな土壇場で変えられたので、師匠への恨みも込めたマクラを作り上げる。
発表会は順調に進み、プログラムに書かれた前半組最後の演者が高座から降りる。
客席からも何やらホッとしたような空気感が漂う。
しかし、ここで緊張感を解かれては困る。
ここからが自分の時間なのだから。
お囃子が鳴り、颯爽とした足取りで高座にあがる。
プログラムの予定とは違うことに、「?」が浮かぶお客さんたち。
ゆっくり客席を見渡した後で一言発する。
「・・・休憩にはまだ早いですよ?」
クスッと客席から笑いが漏れる。
よし。掴みは成功。
「諸事情があり、急遽出番を変更することになりました。もう一席お付き合いをお願いします。」
プログラムを見て、名前を確認するお客さんたち。
すかさず、畳み掛けるように
「初の大トリをいただきまして緊張と自信で気張っていたのですが、先ほど師匠から『前後半の人数が合わない』というくっだらない理由で出演順の変更を申し渡されまして・・・全く、若者の純粋な気持ちをもてあそばないでほしいものです。」
会心の師匠いじり!
瞬間。ドッ!!!と客席に笑いが弾ける。
緩んだ空気が一瞬にして笑いに変わる。
自分の力で笑いをとるこの快感w
この瞬間がたまらねぇwww
そこからはもう無我夢中でネタを繰る。
仕草ひとつひとつに客席の笑いがついてきて、本当に気持ちいい。
ネタが終わり、笑いと拍手に包まれながら高座を降りると、兄さん姉さんからも「上手くなった」と嬉しいお言葉が。
やばいwww
マジで嬉しいwww
お客さんの反応も良かったし、今日はマジで良い落語だったwww
落語の出来は良くても、師匠をだしに使ってしまったのだから謝らなければならない。
すぐに師匠のそばに行き目一杯頭を下げる。
「師匠、マクラで勝手をやってしまい申し訳ありませんでした!」
すると
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「・・・はい。」
せめて何か言ってくれーーー!!!
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